Tech Note | 技術解説

オンプレ基幹を、読み取り専用からAPI化する手順。

IBM i(AS/400)やオフコン、古いWindowsサーバーで動く基幹を「作り直さずに」外の世界へつなぐとき、当社が実際に踏む手順を8つに分けて解説します。情報システム部門の方と、技術の分かる発注責任者の方に向けた記事です。

区分: 技術解説執筆: 株式会社CET Legacy Bridgeチーム更新日: 2026年8月4日

先に、3つの原則

この3つを守ると、失敗したときに失うものが「作業時間」だけになります。手順のすべては、この原則の言い換えです。

手順1: 棚卸し(何が、どこで、どう動いているか)

最初にやるのは設計ではなく調査です。OS・DBのバージョン、テーブル(物理ファイル)の一覧、夜間バッチの流れ、既存の連携(CSV出力・FTPなど)、そして接続に使えるアカウントと権限。仕様書がない場合は、稼働中のソース・DB定義・帳票・ログから読み起こします。ここの精度が、後の全工程の安全性を決めます。

手順2: 接続方式を選ぶ

読み取りの経路には、大きく4つの選択肢があります。環境と制約で決まるもので、優劣は一概には言えません。

読み取り接続の主な方式と向き不向き
方式概要向いている条件・注意
DB直接照会ODBC/JDBCなどでDBを直接参照IBM iのDb2など照会経路が確保できる環境。読み取り専用アカウントと負荷監視が前提。当社が最初に検討する経路
ジャーナル・ログ連携更新ログを読んで変更分だけ取り込む更新頻度が高く、参照側を最新に保ちたい場合。設定の難度は高め
ファイル連携既存のCSV・固定長出力を活用すでに夜間出力がある環境で早い。リアルタイム性は低い
画面経由(5250など)端末画面の項目を読み取る他の経路が塞がれている場合の最後の手段。画面変更に弱く、恒久策には不向き

実際には複数を組み合わせます。たとえば在庫はDB照会、確定済みの実績は夜間ファイル、という形です。

手順3: 文字と型を変換する

古い基幹のデータは、そのままではWebの世界で読めないことが多いです。典型は3つ。

変換ルールは表にして残し、後述の並行照合で毎回突き合わせて確認します。

手順4: 「読み取り専用」を技術で担保する

「読み取りしかしません」は約束ではなく設定で担保します。専用アカウントを作り、参照権限だけを付与。接続元を接続層のサーバーに限定し、同時接続数と実行時間に上限を設けます。基幹側のCPU・応答時間を監視し、しきい値を超えたら接続層側で自動的に間引く(スロットリング)構成にします。夜間バッチの時間帯は照会を避ける設計も有効です。

手順5: APIを設計する

テーブルをそのまま公開せず、業務の言葉でリソースを切ります(在庫照会、受注状況、出荷予定など)。基幹の項目名は接続層で読みやすい名前に写像し、キャッシュの持ち方(何秒前のデータまで許すか)を業務ごとに決めます。ここで決めた「鮮度」の合意が、後の運用トラブルを防ぎます。認証・認可・監査ログはこの層で一元化します。

手順6: 並行照合(いちばん地味で、いちばん大事)

APIが返す値と、現行の帳票・画面の値を並行期間中ずっと突き合わせます。観点は3つ: 件数(レコードが欠けていないか)、金額(合計が一致するか)、コード(変換で壊れていないか)。日次で自動照合し、不一致はすべて原因を特定してから先に進みます。「だいたい合っている」で進めないことが、後の信頼をつくります。

手順7: 受入基準を満たしてから本番へ

本番化の条件は感覚ではなく数値で決めます。例: 日次照合の不一致が0件のまま規定日数続くこと、応答時間が合意値以内であること、障害時の遮断・切り戻し手順のリハーサル完了、基幹側負荷が合意の範囲内。満たさない範囲は本番化しません(ここは当社の受入基準の考え方そのままです)。

手順8: 運用(公開してからが本番)

誰が・いつ・何を読んだかを監査ログに残し、基幹側の変更(項目追加・帳票変更)を検知したら照合を再実行します。障害時にはAPI側だけを止めて業務を現行運用に戻せることが、読み取り専用構成の最大の強みです。ここまでを運用手順書と移管資料にして、内製でも回せる状態でお渡しします。

よくあるご質問

基幹に負荷がかかって、業務が遅くなりませんか?
その懸念があるため、読み取り専用アカウント・同時接続数の上限・実行時間の上限・負荷監視としきい値での自動間引きをセットで設計します。加えてキャッシュの持ち方を業務ごとに決め、基幹への照会回数そのものを減らします。負荷の目標値と測り方は、診断の段階で合意してから進めます。
ODBCが使えないほど古い環境でも可能ですか?
経路はDB直接照会だけではありません。既存の夜間出力を使うファイル連携や、最後の手段としての画面経由など、環境に応じた代替があります。どの経路が使えるかは環境・バージョン・権限次第のため、現状・投資判断診断で可否を先に判定し、難しい場合はその旨を成果物に明記します。

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